炭そ菌について
2001年10月20日(土)、マイアミ日本語補習校主催により、フロリダ州保険省疾病対策局に勤務される成田昌弘医師を講師として「炭そ菌説明会」が実施されたところ同要旨を以下の通り掲載致しますので、ご参考にして下さい。
● 炭疽菌は、自然には土壌中に生息し、羊や牛などの草食動物に感染する。
● 人には感染した家畜の肉を通じてうつることがある。
● トルコからパキスタンにかけての一帯は「炭そベルト」とも呼ばれ、患者が多い。世界では年に2 万~10万人の感染者がいるとされる。
● 炭疽菌は、土壌では、菌が殻に包まれる芽胞(胞子;spore)という状態で生存している。
● この芽胞が細菌兵器として使われる。
● 病状は皮膚、肺、あるいは腸から感染する3種に分類される。
● 皮膚、肺が現在の主要経路。
● 芽胞が皮膚の傷口からはいって、3~5日後に発症する。たいていは顔、首、手足に発症する。
● 皮膚の症状に加え、発熱、筋肉痛、傷の周りの発赤、むくみもみられる。
● 最初はかゆみを伴ない、腫れてくる(この時点では、虫刺されのよう)。
● 続いて24~36時聞後に、水疱(透明な液体)を持つようになる。
● 水疱が破け、1~3cmぐらいの大きさの皮膚の潰瘍(無痛)ができ、中心に黒い痕ができる。
● 周りにいくつかの同じような水疱ができることもある。
● 抗生物質がよく効く。
● 皮膚の症状が出てから、時間が経って薬を飲みだしても有効。
● たいていは、命取りにならない。
● 肺感染は、吸い込んだ芽胞が肺に付着して感染する。
● 直径1~10μm(1mmの1/100~1/1000)でないと肺に付着しない。
● 8000~1万個の芽胞を吸入すると発症する。
● 芽胞が大きすぎれば鼻腔より奥に入らず、小さすぎると体外に吐き出されてしまう。
● 細菌兵器に応用するのは極めて困難とされる。
● 吸入後、1~7日で発症する(ただし、40~50日後に発症することがある)→抗生物質は60 日間飲む必要がある。
● 初期症状:風邪の症状(華氏100度、摂氏37.8度以上の熱;咳;疲労;筋肉痛;胸部の不快感)
● 続いて:1~3日間、一時的に良くなることもあるが、その1~5日後に突然高熱がでて、呼吸困 難になり、24~36時間後に死亡。
● 平均すると最初に症状が出てから3日後に死亡(90%の確率で死亡)。
● 人から人にはうつらない。
● 芽胞は湿度の高いところでは、固まって大きな粒になってしまう。
● 農薬空中散布機は、密度の高い農薬を撒くようにできているため、100μm以上の大きな粒に なってしまう。
● 日本では、オウム真理教が散布したが被害出ず。
● 痘そう、Smallpox
● ウイルスによるもので、くしゃみ、咳など空気を介して、人から人にうつる。
● いったんかかると30%の死亡率。
● 1980年に、天然痘撲滅宣言。
● ワクチンは、30万人に1人の確率で脳炎を起こし、また死亡することもあり、現在は使われていない。
● 1980年以前に、ワクチンを受けていても、10年経つと効かなくなっている。
● 症状:7~17日の潜伏期の後、高熱が出る。
● そして、紅斑が最初に、顔と腕に、次に、脚に現われる。
● その後、特徴的な発疹が出くる。
● 有効な抗生物質なし。
● ガスマスクは、生物兵器が使われた時にしていないと無効です。
● マスクは、使う人にぴったりあっていないと無効であり、かつ、使用に慣れていないといけない。イスラエルでは、使用を間違つて窒息死した人もいます。
● 結論:気休めにしかならず、薦められていません。
● 炭疽菌のほかにも何種類も生物兵器として使われる可能性のあるものがあり、すべてに有効な抗生物質はない。
● 抗生物質には有効期限がある。
● 副作用が人によって起こることもあり、必要なく飲むことは薦められない。
● 必要なく飲んでいると、炭疽菌以外の一般の細菌の薬剤耐性を誘発し、本当に必要な時に効かなくなる。
● 家庭用水は、貯水池から送られてくるが、貯水池の水は産業用も含め、毎日何万トンも使われている。この水を汚染するためには、トラック何台分
もの粉が、必要。
● 水道中の塩素がほとんどの細菌を殺してしまう。
● 結諭:テロリストが水道の飲み水を汚染することは非常にむずかしい。
● 米国政府は、National Pharmaceutical Stockpileといって、非常時に備え、抗生物質や解毒剤を持っている。
● 何かあった時には、アトランタのCDCから、12時間以内に支給される。
● 残念ながら、前もつて、生物テロから守れる方法はほとんどありません。
● 大気中にあるを芽胞を検出する方法はなく、最初のサインは、肺炭疽や天然痘の患者さんである。
※ 症状の知識、保健所の位置の確認、住んでいる地域のニュースを知つておく。
MIAMI-DADE COUNTY HEALTH DEPARTMENT
● Downtown Clinic:1350NW 14th St., MIAMI, FL 33125:TEL(305)324-2400
● Quail Roost Clinic:12330 Quail Roost Drive, MIAMI, FL 33157:TEL(305)278-0928
● 80th Terrace Health Center:(305)754-6821
● North Miami center:(305)953-3161
● Rosie Lee Wesley Clinic:6601 SW 62nd Ave., MIAMI, FL 33143:(305)669-6906
BROWARD COUNTY HEALTH DEPARTMENT
● 2421 SW 6th Ave., Fort Lauderdale, FL 33315:(954)467-4700
● South Regional Health Center Clinic Schedule:4105 Pembroke Road, Hollywood, FL 33021:(954)995-4800
● Sunrise Health Center Clinic Schedule:Edgar P Mills Multi-Purpose Center:900 NW 31th Ave., Fort Lauderdale, FL 33311: (954)327-6000
● Paul Hughes Health Center Clinic Schedle:205 NW 6th Ave., Pompano Beach, FL 33060:(954)788-6140
PALM BEACH COUNTY
● Delray Beach:274-3100(225 S Congress Ave., Dalray Beach)
● Riviera Beach:882-3200(301 Broadway, West Palm Beach)
● 生物兵器は、たとえ被害が小さくとも、社会に大きな混乱と不安を巻き起こす。
● 恐怖の拡散」が狙い。
● 万が一、身近に被害者が出た時にも確実な知識を持って、冷静に行動できるにようにしましょう。
炭そ菌その他の疾病媒体生物による汚染のおそれへの対処方法についての情報提供 (2001年10月16日現在)
10月15日、厚生労働省は、米国厚生省疾病管理・予防センター(CDC)が米国在住者向けにウェブサイト上で連絡している「炭そ菌その他の疾病媒介生物による汚染のおそれへの対処方法」を日本語に仮訳の上、同省のウェブサイト上に掲載しました。
上記資料においては、炭そ菌等による汚染のおそれのある封筒や小包みを受け取った際の対処法、封筒内の粉がこぼれた際の対処方法、煙霧化による部屋の汚染の疑いがある場合の対処方法、及び疑わしい小包みや書簡を見分ける方法等が具体的に説明されております。