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在マイアミ日本国総領事館 首席領事 NW

サンシャイン・シティー・マイアミ

 燦々と降り注ぐ陽光の下、海岸通りの揺れる椰子の並木道の向こうには、巨大な豪華客船や白い帆を掲げたヨットが行き来し、林立する近代的な高層ビルの間を縦横に走るハイウェーは、青い海の上に延びて美しい島々をつないでいます。
 サンシャイン・ステートと呼ばれるフロリダ州、その最大の都市マイアミに2月に赴任した印象はまさに華やかな米国の観光地に着いたなあということでした。
 しかし、まぶしい街を歩き、街の人々と会話を交わすにつれ、、このマイアミが米国でも特別なところであることに気がつきました。聞こえてくるのは、英語よりもスペイン語であり、街の雰囲気や音楽も米国の他の都市とはずいぶんと違う、妙に明るい開放的なものなのです。前任地の中米ニカラグアを離任する時に、多くのニカラグアの友人たちが私にささやいた言葉を思い出しました。「マイアミは、ニカラグアの第二の首都なんだよ」と。マイアミには、なんと50万人ともいわれるニカラグア人のコミュニティーがあるのです。ニカラグアの首都マナグアの人口が百万人であることから、確かに言い得ているともいえます。キューバやコロンビアは、さらに大きなコミュニティーを持ち、ヒスパニック人口は、州の全人口の18.1%を占める302万人です。このことが、フロリダ州特にマイアミを全米の都市の中でも得意な地位に置いています。
 フロリダ州は、全米第4位の人口1738万人を持ち、マイアミ空港の貨物扱い量は全米1位、また、ニューヨークに次ぐ全米2位の金融センターで、貿易面では、日本がフロリダ州第1位の輸入国です。政治的にもブッシュ大統領の実弟のジェブ・ブッシュ氏がフロリダ州知事であり(2006年2月現在)、大統領選挙人538名中27名を占め、連邦議会の上院議員2名、下院議員25名を擁し、ヒスパニック・コミュニティーは、米国政治に大きな影響を与えています。更に、世界的な観光地で、オーランドにあるディズニー・ワールドやユニバーサル・スタジオを目当てに、毎年8万2千人の日本人観光客が押し寄せます。また、マイアミは、世界のクルーズ船の寄港地であり、米国から中南米への飛行機の基軸(ハブ)空港であり、中南米へのゲートウェー(玄関)であるといわれています。
 この様に、フロリダ州及びマイアミは、全米でも政治、経済、社会、文化的に非常に重要な地位を占めているのです。さらに、近年、米国と中南米各国との自由貿易協定が次々と締結され、米州自由貿易圏の創設も引き続き検討されている現状においては、フロリダ州マイアミの地位は、ますます高まっているといえます。
 このマイアミにおいて、私は、日本及び日本国民の利益の保護、通商、経済、文化、社会関係の緊密化、領事事務、特にハリケーン来襲をも念頭に置いて邦人保護等の館務の円滑な遂行に努め、更に日本のプレゼンスとビジビリティーの向上に大いに努力する所存です。勤務の中で、多くの米国人に加え、ヒスパニック系やアジア系の米国人と知り合い、関係を深めるにつけ、この躍動する力強い文化的多様性を寛容に受け入れる偉大な米国の懐の深さと豊かさを実感せずにはいられません。(2006年2月記)